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生物の生存戦略
われわれ地球生物ファミリーは いかにして ここに かくあるのか



<共生と生物進化>


                                産業技術総合研究所 深津武馬
                                記事執筆 皆川秀洋(東京大学立花ゼミ生)


アブラムシは自分の力だけでは生きることができない。生きるのに不可欠な必須アミノ酸を、外部から取り入れることも、自分で作り出すこともできないからだ。ではなぜアブラムシは実際のところ元気に生きているのかというと、アブラムシの消化器官の中には無数の微生物が住んでいて、アブラムシが摂取した栄養を食べて、必須アミノ酸を排泄するのだ。だからアブラムシは必須アミノ酸の心配をせずに生きていくことができる。

深津武馬先生が研究をしているのは、このような現象、「共生」である。生物Aと生物Bがいて、それらが密接に相互作用しながら生存している場合、それを共生している、と呼ぶ。普段深津先生は聴衆の前で講演するときは、「わたしは共生の研究をしています」と言うらしい。そう言った方が、「昆虫の研究」、や「微生物の研究」、と言うよりよっぽど好意的な目で見てもらえるからだ。それだけ「共生」という言葉の生むイメージは快いものなのだが、今回深津先生が講演で紹介する共生はそんなイメージを吹き飛ばしてしまうような迫力がある。

話を戻すと、「共生」という概念はとても大雑把なとらえ方で、それはつまりライオンとシマウマのような、獲物と捕食者の関係も「共生」と呼ぶし、そのライオンの食べのこしを狙うハイエナとハゲタカのような競争関係も共生と呼ぶことになっている。もちろん、映画「ファインディングニモ」に出てくるクマノミとイソギンチャクのような両方に利益のある関係も共生と呼ぶ。そこで、共生からさらに進んだ捉え方が存在する。それは二者がどのような関係にあるかで6通りに分けられる。「寄生」、「片利」、「相利」などだ。

今回深津先生が紹介してくれるのは昆虫や微生物が主役となる、ミクロな世界での共生である。まず驚かされるのが、微生物を体内に飼っていてその微生物がなくては死んでしまうという昆虫が全体の大きな割合を占めるということだ。

その他にもただ外側から眺めているだけではわからない、ミクロの世界での昆虫と微生物の生々しいドラマがたくさん紹介される。目を見張るような映像が所々で流れ、講演時間の30分があっという間にすぎてしまう。

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